自立支援医療(精神通院医療)とは、うつ病や不安症などで心療内科・精神科に通院する人の医療費を、健康保険の3割負担から1割負担に軽減する公的制度です。所得に応じて月額の上限もあり、申請は住んでいる区市町村の窓口で行います。申請日から適用され、受給者証は2〜3か月で届きます。
この記事の要点
- 医療費の自己負担が3割→1割。所得区分によっては月2,500〜10,000円の上限つき
- 対象は「通院による治療を継続的に必要とする精神疾患」。初診の段階から申請できる
- 申請は区市町村の窓口(東京23区は保健所・保健センター)。診断書は指定医療機関の医師が書く
- 申請日から適用。さかのぼりはできないので、通院が続きそうなら早めに
- 使えるのは登録した医療機関1か所+薬局1か所。指定医療機関かどうかは事前に確認する
新宿区で自立支援医療が使えるクリニックを先に見たい方は 自立支援医療(精神通院)対応のクリニック一覧 へ。公的な指定一覧と当サイトのデータを突合して掲載しています。
自立支援医療(精神通院医療)とは?
自立支援医療(精神通院医療)とは、精神疾患の治療のために通院する人の医療費を公費で補助し、自己負担を原則1割にする制度のことです。障害者総合支援法にもとづく制度で、通称「自立支援」「精神通院」と呼ばれます。
厚生労働省は対象を「統合失調症、精神作用物質による急性中毒、その他の精神疾患(てんかんを含む)を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する病状にある者」と定めています。うつ病、双極性障害、不安症、パニック症、適応障害、発達障害、不眠症なども、通院治療が続く見込みであれば対象になります。
対象になる医療・ならない医療
対象は「入院しないで受ける精神疾患の治療」です。診察、薬、デイケア、訪問看護が含まれます。次のものは対象外です。
- 入院中の医療費(入院は別の制度の対象)
- 精神疾患と関係のない病気やけがの治療(風邪、歯科など)
- 健康保険が使えないもの:自費カウンセリング、診断書の作成料、保険外の検査
- 登録していない医療機関・薬局での受診
「精神科に通っている人全員」ではなく「通院が継続的に必要な人」が対象です。ただし、半年通院しないと申請できないといった期間の条件はありません。医師が継続的な治療が必要と判断すれば、初診の時点から申請できます。
医療費はいくら安くなる?所得別の月額上限
自己負担は医療費の1割になり、さらに所得区分ごとに月額の上限が設けられています。たとえば医療費の総額が月15,000円なら、健康保険だけだと4,500円、自立支援医療を使えば1,500円です。年間では36,000円の差になります。

| 所得区分 | 世帯の条件 | 月額上限(通常) | 月額上限(重度かつ継続) |
|---|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護世帯 | 0円 | 0円 |
| 低所得1 | 区市町村民税が非課税で、本人の収入が82万6,500円以下 | 2,500円 | 2,500円 |
| 低所得2 | 区市町村民税が非課税で、本人の収入が82万6,500円超 | 5,000円 | 5,000円 |
| 中間所得1 | 区市町村民税(所得割)が3万3千円未満 | 1割負担(上限は医療保険の高額療養費の限度額) | 5,000円 |
| 中間所得2 | 区市町村民税(所得割)が3万3千円以上23万5千円未満 | 1割負担(上限は医療保険の高額療養費の限度額) | 10,000円 |
| 一定所得以上 | 区市町村民税(所得割)が23万5千円以上 | 対象外 | 20,000円 |
※練馬区「自立支援医療費助成(精神通院)」の案内(2026年10月確認)にもとづく。本人の収入の区切りは自治体の案内で確認してください。
- 「世帯」は住民票ではなく、同じ健康保険に入っている人の範囲で判定されます。親と同居していても健康保険が別なら、世帯は分かれます
- 会社員や公務員で所得割が23万5千円以上(目安として年収がおおむね800万円を超える世帯)の場合は、原則として対象外です。ただし「重度かつ継続」に該当すれば月2万円を上限に利用できます
- 中間所得で「重度かつ継続」に該当しない場合は、上限額は設定されず1割負担のみが適用されます
負担額のシミュレーション
1か月の医療費の総額(10割)ごとに、健康保険だけの場合と自立支援医療を使った場合の自己負担を比べると次のようになります。
| 1か月の医療費(総額) | 健康保険のみ(3割) | 自立支援医療(1割) | 上限5,000円が適用される場合 |
|---|---|---|---|
| 5,000円(診察のみ) | 1,500円 | 500円 | 500円 |
| 15,000円(診察+薬) | 4,500円 | 1,500円 | 1,500円 |
| 30,000円(診察+薬+心理検査など) | 9,000円 | 3,000円 | 3,000円 |
| 60,000円(デイケア利用など) | 18,000円 | 6,000円 | 5,000円 |
※医療費の総額は例示。自己負担は端数処理前の計算値。上限5,000円は低所得2、または中間所得1で「重度かつ継続」に該当する場合の例。
月15,000円の通院なら年間36,000円、月30,000円なら年間72,000円の差になります。診断書の作成料(数千円〜1万円程度)は、ほとんどの場合2〜3か月で回収できる計算です。
「重度かつ継続」とは
「重度かつ継続」とは、長期間にわたって高額な治療が必要と認められる状態のことです。統合失調症、気分障害(うつ病・双極性障害)、てんかん、認知症などの診断がある人、または3年以上の精神科治療歴があり集中的・継続的な通院治療(通院精神療法など)が必要と医師が判断した人が該当します。該当するかどうかは診断書に医師が記入します。うつ病で継続的に通院している人の多くはここに入るため、所得区分が中間所得でも上限が適用されます。
申請の流れと必要書類
申請は、通院先で診断書をもらい、住んでいる区市町村の窓口に出すだけです。東京23区は保健所・保健センター、市町村は障害福祉の担当課が窓口になります。流れは5ステップです。

- 通院先の医師に「自立支援医療を申請したい」と伝える。指定自立支援医療機関であることを確認し、診断書(自立支援医療診断書・精神通院)を依頼する
- 診断書を受け取る。作成に1〜2週間かかることが多く、作成料は自費(医療機関により異なり、数千円〜1万円程度)
- 区市町村の窓口で申請する。申請書はその場でもらえる。診断書は記載日から3か月以内のものに限る
- 「申請書の控え」を受け取る。受給者証が届くまでは、この控えを医療機関と薬局に見せると1割負担になる
- 受給者証が郵送される(東京都の場合、申請から約2〜3か月)。以後は受診のたびに提示する
必要書類チェックリスト
- 支給認定申請書(窓口にある。自治体サイトからダウンロードできる場合も)
- 自立支援医療診断書(精神通院)。指定医療機関の医師が、都道府県指定の様式で作成したもの。記載日から3か月以内
- 健康保険の情報が確認できるもの(保険証、資格確認書、マイナ保険証の資格情報など)
- マイナンバーが確認できる書類と本人確認書類
- 区市町村民税の課税状況が分かる書類(マイナンバーの情報連携で省略できる場合が多い。前年に転入した人は前住所地の課税証明書が必要なことがある)
- 更新・変更の場合は、今の受給者証の原本
すでに精神障害者保健福祉手帳を持っている人は、有効期限内の手帳の写しで診断書に代えて新規申請できます(「重度かつ継続」の申請を除く。新宿区の案内)。家族が代わりに申請する場合は、代理人の本人確認書類が必要です。
新宿区の申請窓口
| 保健センター | 所在地 | 電話 |
|---|---|---|
| 牛込保健センター | 新宿区弁天町50 | 03-3260-6231 |
| 四谷保健センター | 新宿区四谷三栄町10-16 | 03-3351-5161 |
| 東新宿保健センター | 新宿区新宿7-26-4 | 03-3200-1026 |
| 落合保健センター | 新宿区下落合4-6-7 | 03-3952-7161 |
※新宿区「自立支援医療(精神通院医療)」の案内(2026年10月確認)。住所地を担当する保健センターで申請すると交付が早い。
いつから使える?受給者証が届くまでの扱い
申請を受け付けた日から適用されます。受給者証が届くまでの2〜3か月間は、申請時にもらう「申請書の控え」を提示すれば1割負担で受診できます。申請日より前の受診分にはさかのぼれないので、通院が続きそうだと分かった時点で申請するのが損をしない方法です。
- 申請日=有効期間の開始日。有効期間は原則1年
- 控えを出し忘れて3割払った分は、受給者証が届いてから医療機関・自治体に相談すると差額の払い戻しを受けられる場合があります(自治体により手続きが異なる)
- 受給者証を忘れて受診した場合も同様に、後日精算できるかは医療機関と自治体の対応によります
使える病院・薬局の探し方
自立支援医療が使えるのは、都道府県が指定した「指定自立支援医療機関」のうち、受給者証に登録した医療機関1か所と薬局1か所だけです(デイケアや訪問看護を別の機関で受ける場合は追加で登録できます)。今通っている病院が指定を受けているか、これから探す病院が指定を受けているかは、申請前に確認しておく必要があります。
探し方は3つあります。
- 当サイトの一覧で確認する。東京都が公開する指定一覧と、当サイトが公的データで整備した心療内科・精神科の情報を突合し、対応クリニックに「自立支援医療」の表示を付けています。新宿区では、保険診療を行う心療内科・精神科126件のうち101件が指定医療機関です(2026年10月1日現在の東京都の一覧による)
- 東京都福祉局の指定一覧(Excel)で確認する。毎月1日に更新され、病院・診療所、薬局、訪問看護の3種類が公開されています
- 医療機関に直接聞く。「自立支援医療は使えますか」と電話で聞けば答えてもらえます。精神科・心療内科の大半は指定を受けています
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土曜診療・夜間診療・最寄り駅からの徒歩分数と組み合わせて絞り込めます。並び順は五十音順で、広告の有無で順位を変えていません。
通院先を変えたいときは、受給者証の変更申請が必要です。新しい医療機関は、変更申請を受け付けた日から使えます。薬局も同じです。
更新・変更・引っ越しの手続き
受給者証の有効期間は1年で、期限の3か月前から更新できます。更新を忘れて期限が切れると、新しい申請日からの適用になり、空白期間は3割負担に戻ります。
| 手続き | いつ | 必要なもの |
|---|---|---|
| 更新 | 有効期限の3か月前から期限まで | 申請書、受給者証の原本。診断書は2年に1回(東京都の場合)。前年に添付していれば省略できる |
| 医療機関・薬局の変更 | 変えたいとき | 変更申請書、受給者証の原本。変更申請の受付日から新しい機関で使える |
| 健康保険の変更 | 転職・扶養の変更など | 変更申請書、新しい保険の情報。所得区分が変わることがある |
| 同じ区市町村内の転居 | 引っ越し後すみやかに | 受給者証の原本、住所変更の届出 |
| 別の区市町村へ転居 | 引っ越し後すみやかに | 転居先の窓口で改めて申請 |
| 紛失 | 気づいたとき | 再交付の申請 |
※新宿区・武蔵野市の案内(2026年10月確認)にもとづく。自治体により書類の名称や運用が異なる。
デメリットはある?会社や保険への影響
制度そのものに大きなデメリットはありません。実際の負担は「診断書の作成料が自費」「使える医療機関が登録先に限られる」「1年ごとの更新」の3つです。不安として多い「会社に知られるか」については、知られる仕組みがありません。
- 会社には通知されません。受給者証を提示する相手は登録した医療機関と薬局だけで、勤務先や健康保険組合に「制度を使った」と知らせる仕組みはありません。健康保険組合に医療費の明細が届くのは、制度を使わない通院でも同じです
- 精神障害者保健福祉手帳とは別の制度です。自立支援医療を使っても、障害者手帳を持つことにはなりません
- 生命保険の加入時の告知は、自立支援医療の利用ではなく「通院歴・病名」が対象です。制度を使ったかどうかで扱いは変わりません
- 診断書の作成料(数千円〜1万円程度)は自費です。それでも通院が3か月以上続くなら、1割負担の差額で十分に回収できます
- 登録した1か所でしか使えないため、複数の病院にかかる場合は変更申請が必要です
まとめ:こんな人は申請を
自立支援医療(精神通院)は、通院が続く人なら使わない理由がほとんどない制度です。次の3パターンに当てはまるなら、次の受診で医師に相談してください。
- 通院を始めたばかりで、しばらく続きそうな人:初診の段階から申請できます。申請日から適用なので早いほど得です
- すでに数か月通院していて、薬代が負担になっている人:月15,000円の医療費なら年間36,000円の差。診断書料はすぐ回収できます
- 「重度かつ継続」に当てはまりそうな人(うつ病・双極性障害・統合失調症・てんかんなど):所得が高めでも月額上限がつきます
まず今の通院先が指定医療機関かどうかを確認し、これから探す人は 自立支援医療対応のクリニック一覧 から通いやすい場所を選んでください。受診を迷っている段階なら、こころの状態セルフチェックで今の状態を整理するところから始められます。
よくある質問
申請や利用の場面で迷いやすい点をまとめました。自治体によって運用が異なる部分は、お住まいの窓口の案内が優先されます。
自立支援医療を使うと会社に知られますか?
知られません。制度の利用を勤務先に通知する仕組みはなく、受給者証を提示する相手は登録した医療機関と薬局だけです。健康保険組合には医療費の明細が届きますが、これは自立支援医療を使わない通院でも同じで、制度を使ったこと自体が特別に伝わるわけではありません。会社の健康診断や人事に情報が流れることもありません。
申請する前に払った医療費は戻ってきますか?
戻りません。自立支援医療は区市町村が申請を受け付けた日から適用され、申請日より前の受診分にさかのぼって1割負担になることはありません(武蔵野市・新宿区の案内)。通院が続きそうだと分かった時点で、できるだけ早く申請するのが損をしない方法です。初診から申請できます。
受給者証が届くまでの医療費はどうなりますか?
申請時に窓口でもらう「申請書の控え(受付控え)」を医療機関と薬局に提示してください。受給者証が届く前でも、申請日以降の医療費は1割負担で受診できます。受給者証は東京都の場合、申請から約2〜3か月後に保健センター経由で郵送されます(新宿区の案内)。
カウンセリングの費用も1割になりますか?
健康保険が使えるものだけが対象です。医師の診察に含まれる通院精神療法や、保険適用の心理検査は対象ですが、臨床心理士・公認心理師による自費カウンセリング、保険外の検査、診断書の作成料は対象外で全額自己負担です。受けたいカウンセリングが保険扱いかどうかは、医療機関に事前に確認してください。
精神障害者保健福祉手帳と同時に申請したほうがいいですか?
別の制度なので、同時に申請する義務はありません。自立支援医療は医療費の軽減、手帳は税の控除や交通機関の割引などが目的です。ただし新宿区の場合、有効期限内の手帳を持っていれば自立支援医療の新規申請で診断書を省略でき(「重度かつ継続」の申請を除く)、手帳用の診断書で両方を申請できる自治体もあります。通院先の医師や窓口で、どちらを先に出すと負担が少ないか相談するのが近道です。
引っ越したら手続きは必要ですか?
必要です。同じ区市町村内の転居なら受給者証の住所変更、別の区市町村へ移る場合は転居先の窓口で改めて申請します。通院先の医療機関や薬局を変えるときも変更申請が必要で、新しい医療機関は変更申請を受け付けた日から使えます(武蔵野市の案内)。受給者証をなくした場合は再交付の申請ができます。
出典・参考資料
この記事は次の公的資料をもとに、2026年10月時点の内容で作成しています。制度は改正されることがあるため、申請時は窓口の最新案内をご確認ください。
- 厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」
- 東京都福祉局「自立支援医療(精神通院医療)について」
- 東京都福祉局「指定自立支援医療機関の情報提供(精神通院医療)」(2026年10月1日現在)
- 新宿区「自立支援医療(精神通院医療)」
- 練馬区「自立支援医療費助成(精神通院)」(所得区分と上限額)
- 武蔵野市「自立支援医療(精神通院医療)の申請について よくある質問」
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